桜蔭の「東大離れ・医学部志向」を読み解く

Emi Sakashita
α事務局

桜蔭の「東大離れ・医学部志向」を読み解く

女子学院卒・東大薬学部卒・東大大学院修了後、コロンビア大学教育大学院でも学び、現在は教育サポートに携わっている私、坂下の視点で書きました。進路を考えるにあたり、学生のみなさん、そしてお子様をお持ちの親御様ぜひご一読下さい。

最近、「桜蔭の東大離れ、医学部志向が強まっている」という話題がSNSで出回っています。桜蔭といえば、女子校の中でも“最強”に位置づけられ、伝統的に東大合格者数でトップを走ってきた存在。それがなぜ今、「医学部」へのシフトが加速しているのか? そして「女子が医者や薬剤師を選ぶ理由って結局何?」という疑問。私は女子学院出身で、東大薬学部から大学院を経てコロンビア大学教育大学院でも学んだ経験があります。その立場から、「女性の高学歴キャリア選択」という観点で、少し辛辣に&論理的に掘り下げたいと思います。

1. 「医者になる=安全保障」という流れ
・まず、桜蔭生が医学部に集中し始めた背景としてよく言われるのが、「医者は高学歴の生活保護」という揶揄です。これは昔の「薬剤師」的なイメージに似ています。かつて薬剤師は女性にとって「手に職がつく、安定、出産後にも復職しやすい」という理由で非常に人気があり、今もなお女性比率が高い国家資格職の1つです。
・厚生労働省のデータによれば、薬剤師全体に占める女性の割合は約60~65%とも言われています。
・一方、医師は2020年時点で全体に占める女性の比率が2割強(22%前後)と、まだ少ないように見えますが、新規医師免許取得者のうち女性は3割台後半~4割近くまで上昇しているという報告もあります。
・つまり、医療職の中でも「女性が進出しやすいのは薬剤師」「少しずつ拡大しているのが医師」という構図がある。
・ しかし、現代の医学部人気は、単なる「手に職」ではなく「高収入・社会的地位・復職のしやすさ・安定」の全取りができる“究極の安定職”と見なされている節が強い。昔の女性向け「薬剤師」という職業にあった強みが、医者にも拡張されている感覚です。特に桜蔭クラスの超進学校女子にとっては、そこに「偏差値の高さ」「社会的評価」が噛み合って、今の医学部人気が加速しているように感じられます。
・ちなみに当方の代から薬剤師国家試験の制度が変わり薬学部も4年、6年制に。私は研究のため大学院進学を選びましたので薬剤師試験は受けられませんでした。先輩もほぼ薬剤師は大学生のバイトでしか使っていない、、とのことでまあいっか。という感じです。東大では90名の薬学部生のうち薬剤師枠は9-10名程度でした。

2. 「なぜ東大ではなく医学部?」という問い
・「東大に行けば官僚や大企業、あるいは研究職など、幅広い道が開けるはず。なぜわざわざ医学部を選ぶの?」という疑問があるかもしれません。これに対して、私から見ると主に2つの理由が考えられます。
・(日本の現状で)コスパが良い
東大に入って官僚や外資コンサル・大企業へ行っても、将来が不透明な時代。ましてやビジネスや起業の世界はさらにリスクが高い。一方、医者になれば国家資格で一生守られる上に、初任給から一定以上の水準が保証される。さらに女性は出産・育児のブランクがあっても比較的スムーズに復帰しやすい(病院・科の選択によるが)。この「努力に見合った安定」が、桜蔭生たちが“リスクを避けたい”という心理にマッチしているわけです。

・生真面目さ・偏差値偏重の延長
桜蔭の文化的特徴として「勉強が得意なら、その延長で最も“偏差値の高い”道を選ぼう」という傾向が強いように見えます。医者は理科三類(東大医学部)をはじめ、医学部入試そのものが高難易度=“高い偏差値の価値”を象徴する。また、「人の命を救う」という社会的にもわかりやすい価値があるため、優等生的な意味での“やりがい”とも噛み合う。そうなると、「どうせ勉強が得意なら東大より医学部のほうが良いのでは?」という流れが生まれているのでしょう。

3. 薬剤師を選ぶ女性が増えた理由と、その延長としての「医者志向」
・日本の薬剤師は昔から女性が多かった。
・理由: 「病院や調剤薬局での勤務を選べば、比較的ワークライフバランスが取りやすい」「出産・育児後にパートからでも復帰可能」「高齢化社会で需要が安定的」など。
・結果的に、国試合格者(薬剤師免許取得)の約60~65%が女性というデータにつながっています。
・ただし、近年では「薬剤師よりも医師の方がさらに経済的・社会的に有利」という認識が広まり、もともと理系が得意な女子が「薬剤師を飛び越えて医師を目指す」現象も見受けられます。薬剤師でさえ「手に職&安定」で女性に人気だったものが、「さらに高収入で一生ものの専門職」となると、当然そちらに流れる人も増えるわけです。
・文部科学省が発表している「学校基本調査」のデータを、ニッポンドットコムが独自に精査したところ、国公私立大学の医学部医学科に入学した女性の割合は、23年度で40.4%だった。23年度の医学科の入学者総数は9007人で、そのうち女性は3640人だった。
とのデータもあります。>https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01978/

4. 桜蔭と女子学院の違い:自由度と「外向きの視点」の差
・あくまで傾向という意味で対比しますと、私が卒業した女子学院は、どちらかというと「個々が自由に道を選ぶ」校風が強く、進路がバラけるのが特徴です。ビジネス、アート、海外進学など、比較的好き勝手に飛び込む人が多い印象があります。
・一方で、桜蔭は「とりあえず東大→エリート職へ」という超管理・高偏差値文化が根強い。これが、近年「東大→官僚や大企業」での先行きが暗いと思われてきた時代背景と重なり、「じゃあ医学部に流れるのが最適解だよね」という結論になりやすい。ある意味で「日本国内の狭い価値観の最適化」なんですよね。むしろ高い学力が、その“保守的な賢さ”を裏打ちしてしまうとも考えられます。

5. 日本の高学歴エリートが内向き化するリスク
・ここで辛辣に聞こえるかもしれませんが、桜蔭生がこぞって医学部を選ぶ背景には、日本社会が停滞し、閉鎖的になっている現状が透けて見える。リスクを取って起業したり、海外で思い切り挑戦したりするよりも、「医者」という国家資格で確実に安定と高収入を得る方が“合理的”に思えてしまうわけです。
・私自身は、「才能があったり高学歴な人材が、保守的な枠組みに閉じ込められているのはもったいない」という気持ちが強いです。これは男女限らずです。もちろん医者を目指すのが悪いわけではないけれど、本当に優秀であればこそ、もっとグローバルに挑戦できるポテンシャルはあるはず。「海外に行けば?」と強く言いたくなるのは、まさにその「枠を超える」経験を早めにしてほしいからです。

6. 海外へ行け
・私自身、東大薬学部・大学院の後、コロンビア大学の教育大学院に行ってみて初めて「どれだけ日本国内の価値観が狭いか」を痛感しました。アメリカやヨーロッパ、アジアの他国には、起業、テクノロジー、社会起業、国際機関でのキャリアなど、選択肢が無数にあります。医師免許は国ごとにハードルがあるとはいえ、テックや研究、コンサル、NPOといった世界では国境を超えて実力主義で勝負できる場面が多い。
・「医師」という選択はもちろん尊敬に値します。ただ、医者=安定・高収入・社会的地位という思考だけで止まってしまうと、人生の可能性は大いに狭まる。桜蔭レベルの優秀な子たちがこぞってその道に進むのは、日本の未来にとっても人材の偏りにならないかと心配になるのです。

7. まとめ:データと論理が示す「保守化」への一石
・リアル:女性薬剤師は全体の約6割以上を占め、出産後の復職率も高め。
・リアル:女性医師は全体の2割強だが、医学科入学の女子割合は3~4割に迫り、今後さらに増加傾向。
・背景: 社会の停滞と先行き不透明感から、「絶対に潰れない職=医療職」への志向が高まる。
・桜蔭クラスの高学力女子が、国内で「賢く安定」だけを追求すると、日本全体がさらに内向きになる恐れがある。(というか、なっていますね)
・海外を経験すれば、医療職以外にも無数の可能性が広がる。失敗リスクはあるが、得られるリターンや視野は圧倒的に大きい。
・医療の道を志すこと自体は素晴らしいし、大いに応援したいと思います。もちろん、人生をかけて医療の道で人を救いたいという、強いモチベーションの方もいると思います。でも、「まるで昔の薬剤師と同じように“一生安泰だから”医者になっておこう」という動機だけで高い才能をそこに集結させてしまうのはもったいない。日本という枠だけで最適解を出すのではなく、もっとグローバルに可能性を試してほしい。私はそう強く思います。
・女子学院の自由な風土で育った自分から見ると、桜蔭の「医学部至上主義」は少し息苦しく映るし、「そこに本当にあなたの夢や好きなことが入っているの?」と聞きたくなる瞬間もあります。優秀な人が安定を得るのは当然の権利ですが、その優秀さゆえに“もっと外に挑戦する”という選択肢を捨てるのは、本当にもったいない。(といっても女子学院も医学部受験人数はとても多いのですが^^;)
・そんな思いを込めて、「医学部志向」や「女性の薬剤師人気」を眺めると、日本が内向き化している一側面が見えてきます。何度でも言いますが、もし高い学力や潜在力があるならば、海外という選択肢を意識してみてください。医療のプロフェッショナルとして、あるいは研究者・起業家・教育者として、生かせるフィールドが国内だけに限らないことを、私は身をもって体験してきましたから。
・結局は「人それぞれ好きに生きればいい」とは思います。ただ、本当に優秀な人ほど、あえてリスクを取って外の世界に飛び込む価値もあるというメッセージを、お伝えしたいと思います。さらに、そもそもその「安定」と思っている「医者」の道も昨今のAIや、医療制度改革も有り、医者も稼げなくなります。なんのための受験エリートなのか、勉強なのか。安定は大事、でもそれだけで終わるには人生は長い(というかもはや安定、ではない)。私としては、桜蔭生にも、そして多くの高学歴女子にも、もっと視野を広げてチャレンジしてほしいと願っています。

ではどうすればいいの?そもそも桜蔭に入る学力は無いから医学部なら稼げる職にもつけていいかも。。と思っていた方も!

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2025/03/20 14:13:41

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